ナマケモノは中南米に広く分布していて、その広範囲ではペレソソと呼ばれている。ペレソソもまたスペイン語で怠け者を意味する。ちなみに英語ではスロースと呼ばれ、それもまた怠け者を意味する。ナマケモノは世界中どこに行っても怠け者らしい。本当にそうなのか。実際に見てきたペルーとコスタリカのナマケモノを中心に生態にせまってみようと思う。
ナマケモノはこんな動物
一番の特徴はあのゆったりとした動きと、いつ見ても変わらない癒される笑顔。
姿
体長40〜75cm、体重4〜10㎏と種類によって差がある。
生涯のほとんどを木の上で過ごすため、爪は長く木にひかかるように曲がっている。前足の指が3本のものと2本のものに種類が分かれており、共に後ろ足よりも前足が長い。
背中には苔が生えていて、ジャングルに紛れて天敵から身を守る役割もしている。天敵はジャガー、ピューマ、ワシと南米を代表する猛獣たち。
泳ぎが得意
いつもゆったり、ぼーっとしているように見えるナマケモノだが、実は特技がある。泳ぐのだ。しかも陸よりも早く動くことができる。
消化された食べ物が発酵し、お腹にガスが溜まることで浮きやすくなるそうだ。
運が良ければアマゾンで泳いでいるナマケモノを見ることができるかもしれない。
とってもエコ
草食で葉や木の実、果実を食べる。一日に食べる量はたったの8g。
そもそも動かない上に代謝を抑えることで、このわずかな食事で生きていける。ナマケモノは哺乳類には珍しく変温動物で、体温を下げ消化機能をストップさせることで代謝を抑えることができる。消化には平均でも16日かかり、最長では30日もかかる。
なんともエコな動物だ。
意外な死
動物園など人間の飼育下では30年生きられるが、自然はもっと厳しく十数年しか生きられない。自然界に生きるナマケモノに訪れる死は3パターン。
食べられる・餓死・スタミナ切れ
1つ目は自然の摂理なので納得。地上ではジャガーやピューマに、木の上ではワシに食べられる。
2つ目の餓死。ナマケモノは消化に時間がかかるため餓死とは無縁に思えるが、それは消化器官が正常に機能していればの話。正常に機能しなくなってしまうと栄養を吸収することができず、お腹が満腹状態でも餓死してしまう。びっくりな話だ。
3つ目、スタミナ切れ。通常は動きがゆっくりなのだが、天敵に狙われた時など本人でも予測をしていなかった動きをしてしまう場合がある。思いのほかパワーを使ってしまった…その場合にスタミナ切れとなる。
それとは別に、観光客用に飼育されたナマケモノはどうなのだろうか。自然界にはないストレスがかかり、想定を超えた動きをしてしまう場合も多い気がする。人気者なだけに、人間の思いとは逆に追い込まれてしまっている気もする。
ナマケモノは2種類+1
大きく分けて2種類。+1はすでに絶滅しているナマケモノ。もっと広く細かく分類するとさらに数種類いるそう。
ミユビナマケモノ
誰もがよく想像するナマケモノはこれにあたると思う。目の周りが黒くたれ目になっている。ワシントン条約によってペットとして飼うことはできない。
指は3本で尻尾がある。頸椎が9個と首が長いので、水面から顔を出して泳ぐことができる。体長が50〜75cmと幅広い。

フタユビナマケモノ
目が丸くもっとシンプルな顔をしている。日本の動物園にいるナマケモノはこの種類で、家庭でペットとして飼育されているのも同じだ。
名前の通り指が2本で尻尾は無いか、あってもわずかな痕跡のみ。頸椎が6〜7個とミユビナマケモノに比べると首が短く泳ぐことができない。体長は60〜75cm。
オオナマケモノ
正式にはメガテリウムといわれ、もう1万年前に絶滅しているナマケモノだ。
体長は5〜8m、体重は3tにもなる。そんな巨体で現存するナマケモノのようにゆっくり動いていたのか、もっと遅いのか、天敵は何だったのか、謎だらけ。
絶滅危惧のナマケモノ
ミユビナマケモノはさらに4つのグループに分かれていて、その中に2種類の絶滅危惧種がいる。
1つはピグミーミユビナマケモノ。体長は50cm前後と小さい。パナマに生息しており「ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの(CR)」となっている。
もう1つはタテガミナマケモノ。体長55〜75cm、体重4〜10kgとちょっと大きめ。ブラジル東部の熱帯雨林に生息している。アマゾンではなくマタ・アトランチカと呼ばれる地帯になる。「絶滅の危険が増大している種(VU)」にあたる。
ナマケモノは怠け者ではない
ナマケモノは怠け者ではなく、エコな動物だ。動くときは動く。泳ぐことだってできるのだ。私が出会ったコスタリカのナマケモノはよく動いていた。上に登ったり下に下りてきたり、木を移ったり。スタミナ切れで死んでしまわないか心配なくらい活発だった。
またナマケモノの体は他の生物の住処にもなっている。代表的なナマケモノガのほかに、菌類やゴキブリに似た虫などが生きていく上で大事な役割を果たしているのだ。
まったく怠けてなんかいない。
ナマケモノにはここで会える
日本の動物園に沢山いる。でもせっかくなら、ナマケモノの世界に行こう。
ジャングルの中
生息地は中南米のジャングルとかなり広い。しかし野生のナマケモノを見るのは長期間滞在をしない限りかなり難しい。運が良ければ、泳いでいるナマケモノを近くで見ることができる。あとはおそらく、かなり遠くからになる。

ペルーとブラジルのアマゾンで、木に登っているナマケモノを何回か見ることができた。その木はかなり高く、てっぺん付近にいたので双眼鏡や望遠のカメラを通さないと見えない距離だ。それだけ遠くてもガイドはちゃんと見つけてくれる。ガイドが口笛を鳴らすとゆっくり動きだした。天敵のワシの声と勘違いをさせたのだそうだ。
素人が自力で見つけるのはまず無理だ。
アマゾンの民家
ナマケモノを抱っこしている写真を見かけたことがあると思う。そのほとんどはアマゾンの民家だ。保護から飼われている場合もあるが、観光収入となっている場合もある。一番近くで見られて、場所によっては抱っこもできる。だが多くの人間に触れられることは、動物にとってかなりのストレスになっているのは間違いない。

保護施設
動物にとって安全で、確実に見られるのは保護施設だ。ブラックマーケットから保護されたり、何かしらの理由で生きるのが困難になったナマケモノを保護している。可愛い顔を見るだけでなく、そういった事情も聞けるので、動物と触れ合いたい動物好きにはとても勉強になる。人間との距離が保たれているので動物へのストレスが少ないように思う。
ペルーのイキトスにはアマゾンレスキューセンター『CREA』という施設があり、ナマケモノだけでなくアマゾンのあらゆる動物が保護されている。イキトスの中心からバスで行ける。
コスタリカには『Sloth Sanctuary(Santuario de Perezosos de Costa Rica)』というナマケモノ専門の施設がある。ここではボランティアでナマケモノのお世話をすることもできる。
国立公園
施設よりも自然に、ジャングルよりも高い確率で会えるのが国立公園になる。ナマケモノたちはのびのびと暮らしている。当たり前だが、どれだけ近くにいても触ってはいけない。勝手に餌を与えてもいけない。ルールさえ守れば、動物も人間もお互いに気持ち良く過ごせる場所だと思う。

ナマケモノに会いにいこう
野生の動物が人間の前になかなか姿を現さないのは当然だ。それでも見たくてジャングルに行ってみた。遠くからでも野生の姿をみるとワクワクする。ナマケモノを見にジャングルに行ってみよう!
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